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京都異界をたずねて (蔵田敏明)


 平安の昔から時を刻み、千年も昔の時間や空間が、今も息づく京都。都市計画には風水の思想が取り入れられ、早良親王や菅原道真などの怨霊を怖れては神として祀り上げ、陰陽師達の呪術はそこかしこに残る街。

 巷ある京都のガイドブックの中でも、この本ほど京都の楽しみ方が変わる本はないかもしれません。普段から知られている観光地の隠された伝説や歴史を、一つ一つ紐解いて紹介しています。

 例えば現在は清水寺の参詣者で賑わう鳥辺野界隈。ここはその昔、多くの屍が野ざらしにされていた葬送の地であったそうです。幽霊が赤子の飴を買いに来たという話や美女の鬼が恵心僧都を誘惑した逸話が伝わり、また近くの六道珍皇寺には、閻魔庁の冥官を勤めたといわれる小野篁(おののたかむら)が、あの世とこの世を行き来した井戸が残っています。

 また千本通りの北側に位置し、古来から神の降りる山と呼ばれた船岡山は、平安時代には都の北側を守る霊獣玄武の住む山として定められ、清少納言も賞賛する貴族の遊び場でした。しかし後には処刑場となり、さらには都を焼き尽くした応仁の乱の基点となるなど、今にも異界への抜け道が口を開けそうな土地です。

 私もこの船岡山のすぐ南側にある宿坊、千本ゑんま堂会館に宿泊しましたが、そこで境内の裏にある多くのお地蔵様を見てきました。これらは葬送の地であった、この蓮台野に捨てられた赤子の屍を供養するためのお地蔵様で、長い年月の間に土に埋もれてしまっていたそうです。それが明治時代の道路拡張工事で発掘されて、出てきたとのことでした。

 土に埋もれている間に顔も身体の輪郭も摩耗していましたが、このようなお話はこの本を読まなければ、聞けませんでした。

 その他に本書の特徴として、この手の内容の割に、暗さがないことも挙げられます。不必要に過剰な文章で怪談話にすることなく、あくまで伝説や歴史の紹介というスタンスを取っているのも、好感が持てる一因です。

 あなたもこの本で、表舞台に立たない京都の一面を、のぞいてみてはいかがでしょうか。

(レビュー:ほーりー)



京都異界をたずねて

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