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泊まる前に知っておきたい、宿坊を3倍楽しむコツ

後編 宿坊をより楽しむために押さえたいポイント

宿坊に上手に泊まるための三つのコツ

 宿坊では前編で述べたように実に多くの体験が用意され、そこに誰もが参加することができます。

 今度はその体験にどうやって参加するか。宿坊選びのコツや心がけ、実際に宿泊する上でのマナーなどを、一つ一つ紐解いていきましょう。



 まず宿坊に泊まるための三つのコツについて。

 宿坊は実に様々な魅力に溢れ、多くのことが体験できます。それは単なる宿に留まらない文化施設と呼ぶこともできますし、日々の生活を見直すカウンセリングルーム、さらには自分探しや自己実現のためのカルチャースクールの役割も果たしています。

 これだけ体験内容が多岐に渡ると、宿泊する側にもそれぞれ目的が必要になってきます。だから第一のコツは、「目的意識を明確に持つこと」です。

 これは宿坊だけに限った話ではないかもしれませんが、目的が明確になっている人とあいまいなままの人とでは、同じことをしても得られるものの密度は変わります。

 私が旅で学んだことの一つに、「人について行っただけの旅は、出かけた場所の名前さえ記憶に残らない」というものがあります。

 宿坊には様々な要素があるのです。それはお寺や神社という厳粛な空間であったり、その場に漂う静謐な時間であったり、坐禅や写経といった体験であったり、人と人とのふれあいであったりします。

 歴史上の有名人にゆかりのお寺であることもあれば、美しい建築や庭園、仏像などが拝観できるお寺もあります。

 人それぞれに違う興味を持つのが宿坊の楽しみ方なのですから、あなたも自分らしさを発揮して、ぜひ目的を見つけてほしいと思います。前編で宿坊体験を列挙したのも、まさにこのテーマ探しに役立つことを願ってのことです。

 「どの宿坊がおすすめですか?」 と、私に質問をされる方はけっこういます。そんな時には、まず「あなたがやりたいことはなんですか?」と聞き返すことにしています。

 目的も無しに一番の宿坊を教えてほしいと言われても、私には答えようがありません。逆に目的さえ明確であれば、泊まる宿坊も自ずと決まってきます。

 直感で、思いつきで、心惹かれたものがあればそれでいいのです。何も難しく考えることなどありません。テーマを一つに絞る必要もないし、何となくこんなコトがしてみたいとか、こんな一日を過ごせれば素敵だなと、ワクワクできるものがあれば十分です。

 可能であれば旅行に出かけられそうな次の週末を手帳で探して、体験している自分を想像しながらここを読んで頂ければ、こんなに嬉しいことはありません。

 次のコツは、「事前に下調べをする」こと。

 これは一つ目の目的意識にも繋がるのですが、せっかく泊まったのにそこにある楽しさを見逃してしまったのでは、ちょっと残念です。

 例えば前にも少し触れましたたが、和歌山県の高野山には、蓮華定院という宿坊があります。きっと何の知識も持たなければ、普通の快適な一日で終わってしまうでしょう。

 しかしこの宿坊には関ヶ原の合戦後に、真田昌幸・幸村親子が蟄居したことがあるのです。

 真田幸村といえば豊臣家に与し、大阪冬・夏の陣では徳川家康にも恐れられた人物です。時代劇でも常に二枚目俳優が演じ、名武将として絶大な人気を誇っています。そんなお寺に宿泊できるとなれば、歴史ファンならずとも感激するに違いありません。

 蓮華定院には幸村が寝食した間が今も残され、建物には至る所に真田家家紋の六文銭が描かれています。

 しかしそれを仮に知らなかったとしたらどうでしょう。

 関ヶ原の戦いに敗れ、大阪の陣まで表舞台から遠ざかっていた幸村の胸中など、知らずに通り過ぎてしまうでしょう。過ごした日々も、眺め見た風景も、その場で一夜を過ごしながら、決して想像することはできません。

 知っているか知らないか。宿坊には長い歴史があるのですが、30分の下調べだけでも宿に対する見方は大きく変わってきます(そしてその下調べは宿坊研究会と、もしも気になったキーワードがあれば、インターネットで少し検索する程度で十分です)。

 そして最後のコツは、「主体的に行動する」こと。

 これは宿坊に泊まる上でどれだけ充実した体験ができるか。それを左右する非常に重要な心構えです。

 私のもとには何度か、宿坊に泊まったのに朝のお勤めの案内がなかったので、参加することができずに残念だったという感想が寄せられたことがありました。

 これは非常にもったいないことです。お勤めに興味を持つ方が、お勤めに参加できる機会があったのに、ほんのちょっとのきっかけが足りないばかりに機会を逃してしまったのです。もし宿坊の方に事前に聞いていたら、きっと失敗することはなかったでしょう。

 宿坊はホテルのルームサービスのようには、全てを提示してくれないことがあります。自分に興味のあるものがあれば、ぜひ宿泊者側から積極的に聞くように心がけましょう。

 また宿坊はお勤めの後や坐禅等の体験など、同宿の方や宿の人とコミュニケーションを取る機会に溢れています。

 宿坊を選ぶ方は大抵お寺や神社巡りが好きな方ですし、趣味が合えば話もしやすいものです。そうしたふれあいが実は一番の旅の想い出になったりもします。ぜひそんな時は、あなたから積極的に声をかけてみて下さい。




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