泊まる前に知っておきたい、宿坊を3倍楽しむコツ
宿坊でしかできない仏教・神道体験!
(七)建築
茅(かや)葺きや檜皮(ひわだ)葺屋根の温かみのある威容には、見ていていつも心が奪われます。屋根の美しさにおいて日本建築に勝る建物はないと感じていますし、中に入れば柱や梁の機能美を兼ね備えた装飾性に圧倒されてしまいます。
私自身は建築から寺社巡りに興味を持ったため、美しい建物に出会ったときには格別の喜びがあります。それこそ日本人で良かったなと思うほどです。
同じように寺社巡りにおいて、建物を見ることを楽しみにしている人は多いかもしれません。そうした方にとって宿坊は有意義な宿となりますし、普段の十倍の密度で建築を楽しむことができます。
まず宿坊には二つの種類があります。
一つは独立した小さなお寺や大きな寺社の門前に並んだ昔ながらの宿坊街で、中には江戸時代やそれ以前に建てられた建物で寝泊まりできるなど、木造建築であることが多いです。
もう一つは大寺院の境内に建てられた参拝・研修用の鉄筋造りの建物で、○○会館と名が付くことが多いことから『会館系の宿坊』と私は呼んでいます。
宿坊を選ぶとき、大まかにこの二つの違いを知っておくと、宿選びが楽になります。建物の風情に優先順位を置かれる方は前者の宿坊を選ぶと良いし、逆に宿の立地や観光地点を条件に決めている方は後者を選ぶと良いかもしれません。
ただ木の温もりの心地よさは、誰もが知っていることでしょう。このようなお寺が観光する場所に近ければ何も言うことはないし、多少不便な場所にあっても十分に泊まる価値はあります。
会館系の宿坊は設備は十分に整っていますが、裏を返せばホテルのような内装であることもあり、宿坊好きには敬遠されがちな傾向があります。
しかしこのような宿坊においても窓の外に目を移せば、実は建築を楽しむことができます。
建物自体は鉄筋かもしれませんが、その隣に国宝・重文級の建物が建っていれば、普段の旅行者とは全く違った視点で建物を見ることができます。
例えば二階から見渡せば、見上げるだけだった建物を真正面から鑑賞することが可能です。
そして日が沈めば夕暮れ時の、日が昇れば朝焼けの中で建物を見ることができます。
これはときに、はっとするほど美しい光景であり、そんなときに私は宿坊に泊まって良かったと強く感じてしまうのです。
こうした建物の中でも、今まで特に印象深かったのは、京都知恩院の三門と、妙心寺の伽藍です。
知恩院の宿坊では木造門としては世界最大の三門(国宝)を、真正面から見ることができます。一般の観光客ではどうやってもカメラに収めきれないほどの巨大な門を、宿坊二階のベランダから撮影したら、ファインダーにぴたりと収まりました。
また妙心寺には勅使門、三門、仏殿、法堂、方丈と重要文化財の建物が南北一直線に並んでいますが、宿坊に泊まれば夜の境内を歩くことができます。
静まりかえった月明かりは昼とは異なる、別次元の幽玄な世界を見せてくれます。私が始めて宿坊に泊まったのはこの妙心寺ですが、並んだお堂と月の明かりは、私の宿坊旅行の原点にさえなっているのです。
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