泊まる前に知っておきたい、宿坊を3倍楽しむコツ
宿坊でしかできない仏教・神道体験!
(五)滝行
滝行などと聞くと、あなたには遙かに別世界の出来事に感じられるかもしれませんね。
事実、日常生活で滝行に親しんでいる方など、あまり見かけることはないでしょう。なかには江戸時代の行者や、漫画の主人公のパワーアップ手段だと思われる方もいるかもしれません。
しかしそんなあなたにも、滝行に挑戦するチャンスがあると聞いたらどう思われるでしょうか? 宿坊には数は限られているものの、滝行を指導していただける宿が存在します。
私は東京の御岳山で滝行を指導していただきましたが、そこでの体験は生まれて初めての強烈なものでした。
宿坊から山道を歩いて30分。
滝の前で『鳥船』と呼ばれる船を漕ぐ動作で入念に準備体操を行い、深い山の中で「生魂(いくたま)」「足魂(たるたま)」「玉たまる魂」や、「国常建命(くにのとこたちのみこと)」など、腹の底から神様の名前を雄叫びます。
体が温まったらふんどし姿(女性の場合は白装束)で滝に入り、水の中でも「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」という神様の名前を呪文のように繰り返す。
見た目には小さな滝ですが、中に入るとその水量と冷たさにはビックリします。
息が詰まり、口は回らなくなり、唱える神様の名前ももつれもつれになる。
滝の中にいるのはほんの十秒ほどですが、それがものすごく長い時間に感じられます。
それでも入っていると早く出たいと願うのに、出てしまうとまた入りたいと思えてくる。タオルで水を拭き、服に着替え、山道を戻る頃には身体中がポカポカしてくるのです。
清らかな水と空気に浄化され、ストレスも身体の毒素も洗い落としてくれる。それが滝行の魅力かもしれません。
滝行には清めと修行の二つの意味があります。
古来より神事の際には汚れを避けて物忌みし、川や海で禊ぎをしてから神霊を迎える習慣がありました。
日本神話に伊弉冉尊(いざなみのみこと)を追いかけて黄泉の国に入った伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が、死の穢れを川で洗い清めた話があります。このように水には穢れを払う力があるとされているのです。
また密教やそれを取り入れた修験道では、霊地とした山に分け入り、行者達が厳しい修行に励んでいました。特に修験道では死と相対するような壮絶な修行の果てに、超常的な験力を得るとされています。
滝の水を浴びることはその過酷な修行の一つで、自然や神仏と自身を一体化する手段に用いられてきました。
滝周辺の空気は強く負に帯電する傾向があります。自然界では空気中の水滴が分裂するとき、水はプラスに帯電し、周囲の空気はマイナスに帯電します。
平たく言うとマイナスイオンが発生するわけですが、これにはリラックス作用や疲労の回復、新陳代謝の活性化、老化防止などの効果があります。常に電子機器にさらされている現代社会でますますその重要性が増すマイナスイオンですが、ひとときなりと滝の下で浸りきるのも悪くはありません。
滝行は坐禅と比べても、肉体的には厳しい荒行です。無茶をしたために常日頃から鍛えている格闘家が、体調を崩したという話も聞いたことがあります。
しかし指導者の注意をしっかりと守れば、けっして危険なものではありません。あなたもぜひ一度、この新たな境地を発見できる滝行を体験してみてください。
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