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(一)坐禅 -1

 フランスのある新聞社で行われたアンケート「歴史に残る二十世紀の百の言葉は?」に、日本語から「カミカゼ」「ポケモン」「ゼン」の三つが選ばれました。



 「ゼン」とはつまり「禅」のこと。穏やかな心を表現したり、東洋的な精神の象徴として用いられているそうです。興奮したときには「ゼン、ゼン」と語りかけて、気持ちを抑える。この言葉が遠く海外までも、いかに人の心を掴んでいるかが分かる話です。

 禅はもともと、インドの香至(こうし)国王子で六十歳で中国に渡り、禅を形作るための修行を行った達磨大師によって確立されました。

 九年にも及ぶ壁に向かった坐禅は有名で、縁起物のだるまさんは坐りすぎて足と身体が一つになったという俗説に基づき、あの姿をしています。

 日本に禅の思想が伝えられたのは主に鎌倉時代(それ以前にも最澄などが持ち帰ってはいますが)で、ストイックな精神性が武士達の気概に合い、室町時代に武家社会の到来と相まって大きな広がりを見せました。日本で禅宗と呼ばれる宗派には曹洞宗と臨済宗(他に江戸時代に伝えられた黄檗宗)がありますが、どちらもこの時代に誕生しています。

 そしてこの二宗には坐禅にも異なる特徴があります。基本は同じですがそれぞれに作法や思想が盛り込まれていますので、まずは違いを少し紹介しましょう。

 『曹洞宗』の坐禅は黙照禅と呼ばれています。九年間坐り続けた達磨大師のように、壁に向かって黙々と坐り続ける面壁坐禅が基本です。

 曹洞宗の開祖道元の教えに「只管打坐(しかんたざ)」という言葉がありますが、これは坐ることに意義を求めず、ひたすらあるがままに坐禅に打ち込む姿勢が説かれています。

 仏になるのは厳しい修行の成果ではなく、すでに坐った姿がそのまま仏の姿という思想で、この言葉はそれを体現しています。

 一方、『臨済宗』の坐禅は看話禅(かんなぜん)と呼ばれ、有名な人物に一休禅師がいます。

 とんちの一休さんはあなたもご存じのことと思いますが、臨済宗では公案と呼ばれる厳しい問答が重視されています。

 以前に私が取材をさせて頂いたお坊さんの話によると、それは「台所から無を持ってこい」と言った、難解で理不尽にも思える問いかけが続くそうです。「禅問答」とはちぐはぐでわかりにくいやりとりという意味もありますが、まさにそうした矛盾に満ちた問いに取り組み、悟りの道へと到達していきます。

 一般の私達が臨済宗の坐禅会に参加するとき、このような問答はありません。しかしこうした気風からか、坐禅が終わると法話を聞かせて頂けることが多いのも特徴です。また臨済宗の坐禅では壁に向かって坐る曹洞宗とは異なり、壁を背にして人と向かい合って坐ります。

 宿坊では曹洞宗や臨済宗以外のお寺でも坐禅指導をしていただけることはありますが、形式的にはこのどちらかで行われています。




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