泊まる前に知っておきたい、宿坊を3倍楽しむコツ
宿坊に関する三つの誤解
(一)板敷きの本堂に寝泊まりをして、薄い布団で寒い夜を過ごす
私は初めて宿坊に泊まったときのことを、はっきりと覚えています。
それは大学三年の冬のことでした。京都の妙心寺大心院という宿坊に、大学のサークル仲間と三人で宿泊しました。
そのサークルは古い街を歩くことをテーマとしており、私が寺社巡りに興味を持ち始めたのもこのサークルがきっかけでした。
そして宿坊に泊まることになったのもこの活動の延長にあり、ガイドブックの片隅の「宿坊」という単語に興味を引かれたのもこれが原因でした。
しかし私自身はお寺や神社とは何の接点もない、普通の人間です。
家がお寺や神社などということはもちろんなく、親戚、友人を見渡してもそのような知り合いはいません。探せば一人くらいは見つかりそうなものなのに、それすらいなかったのですから、平均よりも接点がなかったと言ってもよいかもしれません。それは一緒に泊まった二人を見ても、似たようなものでした。
だから初めてお寺に泊まるときには、かなりの緊張がありました。今考えるとお寺にはずいぶんと失礼な話ですが、板敷きのお堂で薄い布団にくるまり、寒さに震える姿を想像していたほどです。
底冷えのする冬の京都の気温を見越して、服をたくさん着込んだ上で、靴下も三足くらい履いて寝なければならないだろうかなどと考えていました。何か得体の知れない世界に足を踏み入る覚悟の面もちで、ほとんどそこは私にとって、"魔境"のような存在でした。
しかし、
初めて宿坊に泊まったとき、
その不安はいっぺんに吹き飛びました!
そう。それは目の前がぱーっと開けるような、そんな衝撃だったのです!!
部屋には暖房がかけられていて暖かく、真ん中にはコタツが置いてありました。トイレや洗面所も清潔で、ゆっくりとお風呂に入ることができました。
そこは今まで泊まったどんな旅館より、輝いた客室に見えました。振り返ってみると、この時の想像と現実のギャップが、私の宿坊巡りの旅を始めるきっかけになったのではと思っています。
おっかなびっくり泊まってみたのが、思いもかけないくつろぎの宿だったのです。そして快適な中にもお寺としての凛とした空気が心地よく、そこに心がきゅっと惹きつけられてしまったのです。
私自身がこんな風に誤解をしていたのですから、あまり偉そうなことは言えません。しかしお寺=修行と結びつけて、ボロボロの部屋に雑魚寝すると思われている方は、まだまだ少数派ではありません。
お寺に泊まりに行くと言うと、「風邪引かないの?」と心配されることがあります。それもこの誤解に根ざした言葉なのでしょう。
宿坊は快適な宿です。これは力の限り強調して伝えたいです。
ごくごく一部を除けばほとんどが冷暖房、もしくはそれに準ずる設備を備えていますし、夏でも冬でも快適に過ごせます。
浴衣やタオル、歯ブラシなども、用意されていることは少なくありません。布団やシーツは洗濯され、清潔なものを使用することができます。
さらに全室無線LAN完備、駐車場から客室まで段差がないバリアフリー設計。宿泊者が快適に過ごせることもお寺の勤めと考え、そうした最新設備を整えた宿坊もあるのです。
宿坊は旧時代の遺物ではなく、日々進化しています。古き良きを残しながら、より良い宿へと変化しています。
もしもあなたが不安なイメージを抱いていて、宿坊に宿泊することを躊躇されているとしたら、それはすごくもったいないです。
宿坊は安心して泊まれます。ぜひ、じっくりと楽しんでみてください。
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